■昭和55年以来、約40年ぶりの大改正
昭和55年の大改正以降、高齢化や小子化、核家族化が進むなど社会情勢は大きく変わってきました。平成25年には、それまで非摘出子(※1)の相続分は、摘出子(※2)の2分の1とする相続法が違憲と判断され、両者の相続分は同じであると改正されました。今回も時代に対応すべく改正に至ったものでしょう。
※1 法律上の婚姻関係にある男女の間で生まれた子
※2 法律上の婚姻関係にない男女の間で生まれた子
■改正の主な概要
今回の改正法は、平成30年7月6日に成立し、7月13日に公布されました。施行につきましては、各項目ごとに随時施行される見込みですが、一番早い改正が今年1月13日に施行され、その他の項目については公布日から2年以内に施行される予定となっています。改正点のうち、今回は「遺言制度の見直し」と「配偶者居住権の創設」についてご紹介します。
■遺言制度の見直しで、自筆証書遺言は使いやすくなる?
遺言書の方式は、「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」の三種類があります。そのなかで、一番費用もかからず、遺言者がいつでも一人で作成できるのが「自筆証書遺言」です。ただし自筆証書遺言は、遺言者が全て「自筆」で作成する必要がありました。そのため、その内容に不備があることも多々あります。今回の改正で、遺言の内容のうち、財産目録に関しては、パソコンで作成した文書や不動産にかかる部分は不動産登記簿謄本のコピー、預貯金にかかる部分は預貯金通帳のコピーでも認められるようになりました。今まで記入が難しかった不動産の表記などは、間違いがなくなります。
しかし、改正により「添付された財産目録が本当に遺言書と一体として作成されたものかどうか。」「誰かが差し替えたのではないか?」等の懸念事項も想定されます。、
残された家族のためを思って作成した遺言書が、新たな争いの元になってしまっては、悲しいですね。そう考えると、遺言書を作成するに当っては、やはり「公正証書遺言」が一番確実ではあると考えます。
■残された配偶者は所有権がなくても住み続けられる、配偶者居住権!
長年夫婦で住んでいた自宅が、夫の死亡・相続の発生で、妻が自宅の所有権を相続出来ないとしたら?・・・そこに住み続けることに法的根拠も持てず、継続的入居ができなくなることになります。そこで配偶者の生活保障という観点から「配偶者居住権」が創設されました。
具体的にどのようなケースか、配偶者居住権の一例をご紹介します。
【ケース①】
被相続人:夫
相 続 人:妻・子 (法定相続分:各2分の1) ※遺言書なし
相続財産:自宅評価 2,000万円 預貯金 2,000万円
現行法では、法定相続分として妻・子それぞれ2,000万円分を相続します。妻がこれからの居住のため、自宅(2,000万円分)を相続し、子が預貯金(2,000万円)を相続すると、妻には自宅は残るものの、老後資金としての現預金がゼロになってしまいます。これでは妻の生活が成り立たなくなってしまいます。
創設された配偶者居住権を使った場合、先ず子は、自宅の「所有権」(1,000万円相当分)と預貯金(1,000万円)を相続します。次に妻は、自宅の「配偶者居住権」(1,000万円相当分)と預貯金(1,000万円相当分)を相続します。これにより、妻は自宅に住み続けると同時に、老後資金も確保することができます。
ケース①の場合、このような配偶者居住権の使い方がイメージされます。配偶者居住権は、2020年7月12日までに施行予定です。
尚、現時点では「配偶者居住権」の財産評価の方法は確定されていないため、上記の例はあくまでも仮定によるものです。これ以外にも、今回の改正で重要な項目がいくつかあります。それらに付きましては、このコラムで随時ご紹介してまいります。
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