近年、相続対策や事業承継の新たな手法として「家族信託」が注目を集めています。なぜ今「家族信託」なのか、2回に分けてご紹介させていただきます。
■家族信託とは
家族信託をひと言で表すると、「信頼できる【家族】に、自分の財産を【信】じて【託】す」制度です。10数年前に信託法が改正され、家族間で信託ができるようになったことから「家族信託」という手法が生まれました。
それでは「家族信託」についてご説明する前に、その誕生の背景について少しお話したいと思います。
■認知症による弊害
日本人の平均寿命は、1960年には男性が約60歳、女性が約70歳でしたが、2010年には男性が約80歳、女性が約86歳と15歳以上も長生きするようになりました。このような長寿社会が進むにつれ、「平均寿命」と心身ともに健康な「健康寿命」の差が拡大しています。平成30年の平均寿命と健康寿命との差は、男性で約9年、女性で約12年となっており、この期間は寝たきりや認知症など、日常生活に制限がある状態ということになります。そして、そのなかでも認知症は、大きな社会問題となっています。
認知症を発症すると、判断能力が無くなることから、不動産の売買契約や賃貸借契約、預貯金の解約などの法律行為ができなくなります。このように資産を自由に動かせなくなる状態を「資産の凍結」といいます。この「資産の凍結」自体は、ご本人の資産を守るために必要な措置でもあるのですが、「生活費が下ろせない」「施設に入る資金確保のために自宅を売却したくても売却できない」など、家族にとって困ったことになるケースも少なくありません。
■財産管理の手段としての成年後見制度
それでは万一、認知症のように判断能力が無くなってしまったら、どのような方法で財産管理をしていくのでしょうか。問題を解決する財産管理の手段として、成年後見制度の「法定後見」があります。法定後見とは判断能力が衰えた方に、その支援者(後見人)を選ぶ制度で、「不動産や預貯金の管理」「施設への入所契約」など、様々な手続きを後見人が行えるようになります。
■法定後見制度のデメリット
しかし、この制度は本人の財産や権利を法的に支援・保護するためのものであり、家族にとっては少し使いにくい制度にもなっています。代表的なデメリットをいくつかご紹介します。
①財産を柔軟に動かせない
「本人の財産を守ること」が目的のため、ご家族のためになるような相続対策(例えば贈与など)は、基本的にできません。不動産の売却についても、「施設に入居する費用のため」などの正当な理由が必要になります。
②必ず他人が関わってくる
法定後見人は家庭裁判所によって選任されるため、必ず家族がなれるとは限りません。平成30年のデータでは、親族が後見人に就任している割合は約23%、4人に1人も選ばれていません。親族が後見人になれなかったという理由で、申立を取り下げることもできません。また、家族が後見人になれたとしても、後見監督人をつける必要があり、財産管理には必ず他人が関わることとなります。
③費用がかかる
後見人(または後見監督人)には報酬が発生します。例えば後見人の場合、ご本人の財産金額が5000万円超だと、通常の後見業務で月々5~6万円かかります。特別な後見業務(不動産の売却など)をした場合は、別途40~70万円程度かかることになります。後見制度は決して安い制度ではないのです。
■後見の申立の動機
下の表は、後見申立ての動機を表したものです。「預貯金の解約」が一番多く、次に「身上監護」「不動産の処分」と続きます。認知症および認知症予備軍の方が、全国で860万人いると言われているなかで、後見制度を活用している方は、非常に少ないといえます。
このように使いにくいと言われている後見制度にかわる、新しい財産管理の手法として「家族信託」が登場しました。次回は「家族信託」の基礎知識と活用法についてお話したいと思います。
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