令和2年4月1日に施行された民法の改正から1年以上経過しました。実際にどのような変化があったのか、実例も踏まえてご紹介させていただきます。今回特にお話ししたい内容は、「賃借物の一部滅失による賃料減額」についてです。まず、改正前と改正後でどのように変わったかを振り返ってみましょう。
■改正前
設備あるいは屋根などの建物の一部が故障・破損した場合には、賃借人は賃貸人に「賃料の減額を請求することができる」
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■改正後
賃料減額についての規定が厳格化され、「使用できなくなった部分の割合に応じて、当然に賃料は減額される」
要は、「賃料の減額を請求することができる」という内容だったものが「減額される」という内容に変更になり、入居者からの請求があってから賃料減額対応していたところが、請求が無くても当然に減額されるということになりました。現在、減額に関しての明確な規定までは決められていませんが、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会がガイドラインを作成しているため、各不動産会社、賃貸人はそちらを参考にしていることが多いようです。
参考までに、下記にそのガイドラインを記載します。
■ ガイドラインの使用方法
・まず、A群のいずれかに該当するかを確認し、該当すればA群の賃料減額割合・免責日数を基準に金額を算出する。Aのいずれにも該当しない場合に、B群に該当するかを確認し、該当すればB群の賃料減額割合・免責日数を基準に金額を算出する。
・減額の算出方法は、日割り計算で行う。
<計算例: ガスが 6 日間使えなかった場合 月額賃料 100,000 円>
月額賃料 100,000 円×賃料減額割合 10%×(6 日-免責日数 3 日)/月 30 日
=1,000 円の賃料減額(1 日あたり約 333 円)
※免責日数とは、物理的に代替物の準備や業務の準備にかかる時間を一般的に算出し、賃料減額割合の計算日数に含まない日数を指す。
■ ガイドライン使用上の注意事項
・入居者の善管注意義務違反に基づく不具合は除く。
・台風や震災等の天災で、貸主・借主の双方に責任が無い場合も賃料の減額が認められる。ただし、電気・ガス・水道等の停止が貸室設備の不具合を原因とするものでなく、供給元の帰責事由に基づく場合は、この限りでない。
・全壊等により使用及び収益をすることが出来なくなった場合は、賃貸借契約が当然に終了するため、ガイドラインの対象外である。
・あくまでも上記ガイドラインは、目安を示しているものであり、必ず使用しなくてはならないものではない。
出典:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「貸室設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」
以上のような内容です。
減額割合や免責日数などを独自の基準で設定している会社もあるかと思いますが、多くの不動産会社が契約書類に上記を盛り込み、契約締結時に説明しているケースが増えてきています。
昨年から当社でも、入居中のトラブルを防ぐため、契約書に賃貸住宅の原状回復に関する費用負担の一般原則の考え方やそれ以外の特約、その他ガイドラインなどを記載して入居者に理解していただくようにしております。施行から1年が経過したことで、内容を理解されている入居者も徐々に増えているようで、お部屋の設備不良の連絡をいただく際に、実際に家賃減額請求を依頼してきた方もいらっしゃいました。
あくまでガイドラインではありますが、協議する上での目安にはなりますのでオーナー様もちろん、管理会社である不動産会社も迅速かつ誠意ある対応が必要になってきております。
昨年の民法改正では、「連帯保証人の責任範囲」「敷金・原状回復」「賃料減額」など多くの規定、ルール変更がありました。民法改正が施行されて1年以上経ち、オーナー様、不動産会社ともにいくつか改正に伴う新たな対応をしてきたのではないでしょうか。実例も増えてきていますので、オーナー様が今後賃貸経営をしていく上で改めて情報を見直し、理解されることも重要になってくるかと思います。
当社では、「宅地建物取引士」をはじめ、本年から国家資格化された「賃貸不動産経営管理士」の資格を所有しているスタッフが多く在籍しております。自主管理をされているオーナー様も多くいらっしゃるかと思いますが、そういったプロフェッショナルが在籍した不動産会社に管理を委託することでトラブルを防ぐこともできるかと思います。
管理委託のご依頼はもちろん、賃貸経営に関するご相談がございましたら是非当社にお問い合わせいただければ幸いです。
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