書籍を読んだり、セミナーに参加したり、相続について色々勉強されている中で「ここがちょっと分からない」とか、「もう一度詳しく聞きたい」というオーナー様もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は実際にオーナー様から寄せられた相続に関するご質問に、Q&A方式で回答させていただきます。
Q.遺言(自筆証書遺言)の保管制度ができたと聞きました。遺言の保管制度とはどのようなものですか。
A.自筆証書遺言とは、遺言者がその全文、日付け、氏名を自署しこれに押印することで成立する遺言のことです。自筆証書遺言のメリットとしては、①一人で作れる、②費用がかからない、③遺言の存在を誰にも知られない、などが上げられます。デメリットとしては、①家庭裁判所による検認手続きが必要、②形式や内容に不備があり遺言が無効となる場合がある、③せっかく遺言を残しても、相続人に発見されない、などがあります。今回、遺言の紛失や未発見を防ぐ目的で、2020年7月10日より自筆証書遺言の保管制度が創設されました。遺言者が自ら作成した遺言書を法務局に持ち込み、法務局が遺言書の原本を保管しておく制度です。遺言者が死亡し相続が発生すると、相続人は法務局に保管されている遺言書の閲覧や遺言書情報証明書及び遺言書保管事実証明書の交付を受けることができます。この制度を活用すると、遺言書が見つからなかったり、改ざん、破棄、隠匿の可能性が無くなります。またこの制度で保管された自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認手続きは不要となります。
Q.私は前妻との間に子どもがいますが、20年以上音信不通です。財産は、亡くなった後妻との間の子どもに全て相続させたいと考えております。どのような方法がありますか。
A.いかに音信不通とは言え、前妻の子と後妻の子は、同じ相続権を持ちます。配偶者が既になくなっているので、法定相続分は2分の1づつになります。仮に、後妻の子に全財産を相続させるという内容の公正証書遺言を作成したとしても、前妻の子には遺留分と言う権利があります。遺留分とは民法により法定相続人に認められた最低限の保証です。遺留分は、ほとんどの場合法定相続分の2分の1、つまりこの場合では全財産の4分の1になります。前妻の子から遺留分侵害額請求をされた場合には、原則現金で支払わなければなりません。どうしても全財産を引き継がせたいのであれば、前妻の子に、被相続人の生前に遺留分放棄をしてもらうしかありません。しかしながら音信不通の状態であれば、交渉による遺留分放棄は難しいでしょう。現実的な対策として事前に遺留分対策をしておく必要があります。遺留分対策としては、生命保険を使った代償交付金の支払いなどがあります。いずれにしても事前の対策が不可欠になります。
Q.賃貸業をしていた父が2ヶ月前に亡くなりました。相続税の申告とは違う申告が必要と聞いたのですが、どのような申告でしょうか。
A.賃貸業をされているオーナー様は、毎年所得税の確定申告をしています。1月1日から12月31日までの所得に対して、翌年2月15日から3月15日の間で所得税の申告・納税をします。仮にオーナー様が6月1日に亡くなった場合、1月1日から5月31日までの所得をオーナー様に代わって相続人が申告・納税しなければなりません。この申告のことを準確定申告と言います。この準確定申告ですが、相続発生後4ヶ月以内にしなければなりません。かなり忙しいスケジュールです。ちなみに相続税の申告・納税は相続発生後10ヶ月以内となっています。
Q.賃貸に出していた一戸建の入居者が退去し空室になりました。まだローンは残っていますが、その一戸建を子どもに贈与しようと思っています。注意すべき点は何かあります。
A.不動産等の財産を贈与すると、贈与税がかかってきます。(年間110万円の基礎控除はあります。)その贈与税を課税するために使われる評価は、不動産の相続税評価額を使います。原則相続税評価は、固定資産税評価になります。固定資産税評価は、実際の売買価格(時価)より低い金額です。しかしローンが残っている不動産を贈与し、その後のローンの支払いを受贈者に負わせる贈与の場合、固定資産税評価は使えず、実際の売買価格(時価)を使うこととなります。このことを負担付贈与と言います。ローンが残っている不動産を贈与する場合、その評価額と贈与税に注意が必要です。
今回ご紹介したのは、ほんの一例です。相続だけに関わらず、税金に関する事、法律に関する事など、ご質問がありましたら何なりとお問合せください。弊社では、弁護士や税理士、司法書士とも提携しておりますので、専門家の意見を踏まえたご回答が可能です。
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